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橋田波子のブログへようこそ!!


by aubaden

無知の知、ということ。

何気なく買ったPHP新書の月刊誌に映画作家の大林宣彦さんのインタビューが載っていて、何だかとても共感してしまいました。多くの役者さんの言葉を引用して語られていましたが、長門裕之さんの『この歳になって人を演ずるという事が分かりかけてきたから、まだまだやることがいっぱいある』なんて、とっても素敵な言葉。
最近私がよく思うのは、「私はまだ何も分かっていない、という事にようやく気付き始めた」という事です。『無知の知』と言うのでしょうが、キッカケは作曲をとおしてだったと思います。なぜなら、表現してほしい内容というのは楽語だけじゃあ全然足らないのです。かと言って、日本語でダラダラと書くわけにもいかないし・・・。結局、考えに考えて、楽語だけで表現しますが、表面的な表現方法しか伝わらないかもなぁ・・・なんて思いながら妥協するしかないんですよね。で、そうこうしながら、歴史上の作曲家達や往年の演奏家達に思いを馳せるようになり、自分は何かを分かっているのではなく、何も分かっていなかった、と思うようになりました。人前で何らかの表現をする、という事はすなわち、自分はまだまだ未熟なこの程度の人間です、と言っているようなものです。
作曲家、演奏家はもちろん、映画監督、役者、作家といった表現者全ての立場に立ってみた時、人の喜怒哀楽を表現するとは、何て恐ろしい事であろう、と思わずにはいられません。生身の人間としてそのいずれかの感情に支配された時、その感情をそっくりそのまま言葉に置き換えられる人なんて、存在するだろうか・・・答えはNoだと思うのです。しかし、前述の職業の人というのは、敢えてそれを表現しなければならない・・・。
長門裕之さんの言葉は、役者という職業に非常に謙虚でありながら、表現に対する静かな情熱と希望に満ちた、とても素晴らしい言葉だと思うのです。

吉永小百合さんに憧れる女性はとても多いですが、同誌で引用されていたのは、
『しわを映してしまったら化粧品のコマーシャルは諦めなくてはいけませんね。でも私は100歳になっても女優をやりたいし、おばあさんを演じるのも役者の大事な仕事のひとつ。これからは、しわを見せていかないとならないんですね』という言葉でした。
私にとってはまだまだ深すぎる言葉ですが、一女性として美しいしわを刻む、という事への憧れを増長させてくれる言葉でした。
by aubaden | 2006-09-15 17:04